クリニックの離職 Part 2:離職の原因を理解する
2026年1月27日 ・ 濱村久美
採用しても定着しない。その原因が曖昧なままだと対策は空回りします。本稿はクリニックの採用・育成担当向けに、離職理由を4類型で整理し、次の打ち手を決める材料をご提供します。
本稿はクリニックの離職シリーズのパート2になりますが、パート1をスキップしても読んでいただけるようになっております。
- パート1:人材不足が引き起こす問題
- パート2:離職の主な原因(本稿)
- パート3:定着率向上のための取り組み
離職理由は4つの領域に整理できる
離職の相談や退職面談で挙がる理由は多様に見えますが、実務上は次の4領域に整理すると対策が立てやすくなります。
1. 報酬・待遇への不満
まずは最も話題になりやすい報酬面から確認します。ここが曖昧ですと、評価や育成を改善しても納得感が残りません。
- 給与が低い・昇給が見込めない:成果や貢献が金銭面に反映されないと感じる
- 評価制度への不信感:評価基準が不明確、または運用が不公平だと受け取られる
- 福利厚生の不足:休暇、手当、サポート体制などが他院と比べて弱い
同じ「待遇の不満」でも、原因が異なると打ち手が変わります。混同を避けるため、論点を次のように分けて捉えます。
- 給与水準
- スタッフが感じる不満:生活コストに対して不足。市場相場より低い。
- 確認すべき材料(例):求人票・賃金規程・同職種の相場比較
- 評価制度
- スタッフが感じる不満:頑張りが見えない。基準が曖昧で納得できない。
- 確認すべき材料(例):評価項目・面談記録・昇給基準
- 福利厚生
- スタッフが感じる不満:休めない。支援が薄い。制度はあるが使えない
- 確認すべき材料(例):休暇取得実績・制度利用率・運用ルール
2. 仕事内容・キャリアへの不満
次に、成長実感や役割設計に関する不満です。ここは「忙しさ」と混同されやすいので、業務の質と将来像の観点で見ます。
- 業務過多・マルチタスク:少人数で兼任が増え、学習コストと負担が膨らむ
- 仕事のマンネリ化:新しいスキルが増えず、将来の価値が上がらないと感じる
- マニュアルの欠如:指導内容が人によって異なり、習得が属人化する
- やりたい仕事ができない:志向と担当業務が合わず、強みが活かせない
- 成長機会の不足:研修やフィードバックの機会がなく、キャリアが止まる
- 職場の将来への不安:経営方針が見えず、長期的に働くイメージを持てない
補足:業務量の問題とキャリアの問題を分ける
同じ「しんどい」でも、原因が量(時間・タスク数)なのか質(任せ方・育ち方)なのかで対策は変わります。
退職理由を聞くときは、どちらが主因かを切り分けて記録すると改善につながります。
3. 労働環境・ワークライフバランスへの不満
続いて、勤務条件と生活の両立に関する不満です。ここは院の診療体制や人員配置によって体感が大きく変わるため、前提条件も一緒に確認します。
- 長時間労働・過度な残業:終業が読めず、私生活の予定が立てにくい
- 休日出勤の多さ:休みが不規則で、回復の時間が確保しづらい
- ハラスメントや人間関係の悩み:精神的ストレスが蓄積し、相談できない
- 柔軟な働き方ができない:時短やシフト調整が難しく、家庭事情と両立しにくい
注釈:条件差が出やすいポイント
夜間診療・土曜診療の有無、予約の詰まり方、患者数の季節変動、常勤・非常勤比率などで負荷は変わります。自院の条件を明記した上で課題を整理すると、対策の精度が上がります。
4. 組織文化・風土への不満
最後に、制度よりも「日々の関わり方」に起因する不満です。表面化しにくい一方で、放置すると離職の引き金になります。
- 組織が合わない:雰囲気や価値観が合わず、居場所がないと感じる
- 風通しの悪さ:意見が通らず、改善提案が諦めに変わる
- 正当な評価がされない:頑張りが認められず、年功序列など別要因で決まる
まとめ:まず確認すべき3点
ここまでの4領域を一度に変えるのは難しいため、次の3点から着手すると状況把握が進みます。
- 退職理由を4領域で分類し、件数と頻出パターンを可視化する(退職面談・アンケート)
- 評価と昇給の基準を文章化し、面談で期待値をすり合わせる
- 残業・休日出勤・業務兼任の実態を数値化し、負荷が集中する工程を特定する
パート2で整理した「離職の原因」を、パート3では現場で実行できる打ち手に落とし込みます。